私、あなたの何なのでしょう? 10年目の再会は愛の罠
思いのたけを込めて


 『単なる貧血ならいいんだが…。」

何か悪い病気が隠されていたらどうしようか…。
大学病院へと車を運転しながら考えているうちに、奏佑はハッと気がついた。

『まさか…。』

車のハンドルを握る手に力が籠る。


『…たぶんそうだ…。』

つい最悪を考えてしまい、『病気じゃない』と言った菜々美の言葉を忘れていた。

『あの日か…。』

それなら7週か8週くらい?
明日の検査で全てがわかる。検査の項目にHCGも入れておこう。
オーダーを出しておかなければ…。


検査項目を考えていると、不思議な感覚が湧き上がってきた。

医師としての診断、それと同時に愛しい人の身体の変化を認める喜び…。


だが、どうして菜々美はあんなに頑ななんだ。
あのまま黙って、俺には何も話す気は無かったという事か?

彼女の気持ちがわからない。

すべては、明日だ。菜々美が病院へ来ればはっきりする。

そう自分に言いきかせて、奏佑は仕事に戻った。


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