私、あなたの何なのでしょう? 10年目の再会は愛の罠


院内の廊下を歩いていると、あちこちに目がいった。
ソファーの位置。貼られているポスター。

ここは、奏佑の父と兄が経営している大きな病院だ。
祖父の見舞いの時と違って、平日の外来は見るものすべてが興味深い。

大勢の患者さんが、それぞれの診療科の前で自分の順番を待っていた。
じっと座っている人もいれば本を読んでいる人もいる。
高齢の方、小さなお子さんを連れた方…。

診療所の受付をしていた頃の感覚が蘇ってきた。

脇坂先生が診察室にいて、自分は受付にいる。
彼が患者さんに体調を訪ねたり診察したりする声を聞きながら、私も働いている…

あの18歳の頃が、ただ懐かしい。

ずっと彼の側にいて、彼を助けながら二人して診療所で働く夢を見ていたものだ。

あの頃憧れていた私の立場は、彼の恋人?それとも妻だったんだろうか?

あの頃は確かに思い描いていたはずなのに…。
今となっては、自分が彼のどんな立場に憧れていたのか曖昧だった。

ただ、彼の側にいたいと願っただけ。
それこそが、10代ならではの…夢のまた夢なのだろう。


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