私、あなたの何なのでしょう? 10年目の再会は愛の罠
「許してくれ…。」
「お祖父様…。」
恒三がベッドの上で頭を下げた。
「私が意地を張って、太一郎を遠ざけたばかりに…お前に苦労を掛けた。」
「そんな事…。」
「今更だがなあ…。」
菜々美は何て答えればいいのか迷っていた。
確かに今更だが、祖母の思いやりは伝わってくる。
「絹江が亡くなってからこの日記を見つけたんだ。」
「お亡くなりになった後で?」
「絹江は認知症だったから、このノートも途中で途切れている。」
祖父は寂しそうに項垂れた。
「そうだったんですか…。」
「君の事がたくさん書いてあったから…
何とか亡くなった絹江の分まで、君を幸せにしてやりたいと思ったんだよ。」
「私の事を?そんなに見ていて下さったんでしょうか?」
「そうだよ。小さい頃から、小学校、中学校…高校卒業して大学、就職するまで。」
「まあ…。」
「太一郎が死んだときは、何度か君とお母さんを訪ねようとしたらしい。」
その時、ノックの音がした。
「どうぞ。」
菜々美が応えると、奏佑が無言で入って来た。手に何か用紙を持っている。
「結果が出たよ。」
「わざわざ、ありがとうございます。貧血でした?」
「菜々美、もう誤魔化さなくていい。」