私、あなたの何なのでしょう? 10年目の再会は愛の罠
「ここ数年ご実家におられませんでしたね。」
上条が祖父の言葉に補足した。
「大阪支社に勤務しておりました。」
上条が何処まで把握しているのかは知らないが、
この場で私の身元調査結果を披露する必要はないだろうに。
「今どんなお仕事してらっしゃるの?」
貴子がいきなり聞いてきた。
「三ツ藤商事広報部第一課、課長を務めております。」
「ほう…。」
貴子より、流石に大介の方が仕事内容が解るのだろう。
菜々美の年齢で三ツ藤の広報課長というのは、それなりの肩書だ。
「大学は…一浪なさってるのね。」
又、貴子が話に首を突っ込んで来た。
『ああ、この人は私のアラを探しているのか…』
やっと、貴子の意図がわかった。
今日が初対面の姪に、不適切な所が無いか探っているのか。
「丁度、高校3年生の秋に母が倒れまして、翌年の春亡くなりました。
それで、その年は受験できませんでした。」
キッパリと言い切ると、流石の貴子も口を噤んだ。
この程度の調査結果は上条が提出しているだろうに、この人達は読んでないのか?
『面倒だなあ…』