私、あなたの何なのでしょう? 10年目の再会は愛の罠
奏佑から溢れてくる今まで聞いた事の無かった言葉の数々。
菜々美は力なくベッドに横たわり、奏佑を見つめていた。
「あの頃、先生は私の事を迷惑だっておっしゃった…。」
「だから、あの頃は10代の君にどう接していいかわからなくて。」
「あれから、私がどんなにその言葉を気にしていたか…。」
「菜々美…。」
「人に迷惑掛けちゃいけない、私は独りで生きていけるようにならなきゃいけない…。」
菜々美は彼に、あれからどんな気持ちで生きてきたのか知って欲しかった。
悔しさや悲しさをバネに生きてきたのだ。人に迷惑を掛けない為に。
「ずっとずっと…そう思ってきました。」
「まさか、あの言葉を君がそんな風に苦しめていたなんて…。」
奏佑は菜々美のベットの側で跪き、針を刺した腕をそっと撫でた。
むき出しの腕はひんやりとしている。
「許して欲しい。ただ、あの時、君を守ろうとしたことは信じて欲しい。」
そっと二人の指先を絡めた。
「好きだったんだ。君の事が。だから、清らかな君を傷つけたくなかった…。」
「先生…。」
「好きだから、君の手を取っちゃいけないと、あの頃は思っていたんだ。」
奏佑は菜々美の指先にそっとキスをした。
「今なら、君に触れる事が許されるだろうか…。」
「会いたかった…ずっと、先生に会いたかった。」
菜々美は溢れてくる涙を拭う事も出来ない。
奏佑が手を握ったままなのだ。
彼の指が、そっと涙を拭いながら菜々美の頬を撫でた。
「生まれてくる子と三人で幸せになろう。」