私、あなたの何なのでしょう? 10年目の再会は愛の罠
「絹江が…ばあさんが良く言っていたよ…。私が仕事ばかりしているもんだから
自分は夫と会社の両方と結婚したんだってね。」
「両方と結婚ですか?」
「そうだよ、菜々美。お前は医者という仕事と彼の両方をひっくるめて愛さないと。」
「はい…。」
「彼は優秀だし、使命感もある。」
菜々美は奏佑を見上げた。いつもより少し緊張した顔をしている。
祖父が何を言い出したのか、計りかねているのだろう。
「脇坂先生は、お前の事を大切にしてくれるだろうが、彼が医者である限り
身体も心も決してお前ひとりの物にはならないだろう。」
「はい。今回、先生の側で見ていて良く分かりました。」
10年前の診療所で見ていた彼と、今の彼では随分違っていた。
忙しさも、責任も、全て菜々美が知らなかった事ばかりだった。
「チョッとくらい連絡が無くても、彼を信じていけるかな?」
「彼の側にいられるなら、彼が言葉にして私に伝えてくれるなら…。」
「彼の子供が出来たんだろう。」
「はい…。」