私、あなたの何なのでしょう? 10年目の再会は愛の罠
「他に、何かご質問はございませんでしょうか。」
菜々美はニッコリと微笑んだ。広報マンとしてよく使うセリフだ。
まあ、平均的日本人顔の私が笑おうが、何の効果も無いだろうが…。
どんな手を使ってでも攻めてくる敵の作戦に乗ってはダメだ。
「そこまでにしておきなさい。」
老人が低い声で呟くと、応接室の全員がピリッと引き締まった。
それからは手順通り、弁護士の上条が亡くなった鳴尾絹江の遺産を読み上げた。
菜々美はボンヤリと聞き流していた。
明日の月曜日の業務予定の方が余程彼女にとっては重大だ。
「菜々美…。」
「はい。」
「祖母さんの遺産を要らないと言ったそうだな。」
老人の一言に、鳴尾家の面々が驚愕の表情を見せた。
少しずつニュアンスは違っているが…。
例えば、大介は『さもありなん』という表情。
貴子は、信じられないという『あっけにとられてた』表情。
要は無関心を装った『ポーカーフェイス』
瑠美は…遺産の価値がわからないんだろうと『見下した』表情だ。
「私には、頂く理由がございませんので。」