私、あなたの何なのでしょう? 10年目の再会は愛の罠
「金はいくらあってもいいだろう。」
「そうですね。でも、私は何とか生活出来ておりますので大丈夫です。」
「そうか…。」
ひと言うと、恒三は上条を側に呼びつけ、何か指示を与えていた。
菜々美の席からは聞き取れなかったし、その他の家族もわからない様子だ。
せっかく入れてくれたお茶が冷めてしまったが、菜々美は有難く頂いた。
皆、手をつけなかったが美味しい煎茶だった。
「それでは、私はこれで失礼いたします。」
茶を飲むと菜々美は立ち上がった。
「高村、送りなさい。」
上条が言ったが、その途端に瑠美が口を歪めたので菜々美はうんざりした。
「大丈夫です。駅から電車に乗りますので…
タクシーを呼んでいただけたら助かります。」
その言葉を待ってましたとばかりに貴子が指示を出した。
「貞子さん、お帰りだから車を呼んで頂戴!」
「はい、奥様。」
ドアの近くに控えていたのだろう。あの白い割烹着の女性がすぐに返事をした。