私、あなたの何なのでしょう? 10年目の再会は愛の罠
今ならわかる。何て大それた夢を見たのだろうか…。
たかが18歳の高校を出たばかりの女の子が、10も年上のドクターと恋なんて。
あり得ない、夢物語だ。
田原院長が回復してからも、週に3回、午前中だけ彼の代診は続いた。
私のアルバイトも午前中に終わるから、予備校に行くまでの時間だけ
寸暇を惜しんでお昼を一緒に食べたり、お喋りしたりしていた。
予備校の難しい宿題があると、教えて貰ったりもしたっけ…。
あの頃は、脇坂先生と一緒にいられるだけで良かったんだ。
それは、私にとっては大好きな人とのデートだったが…。
彼にしてみれば、妹か親戚の子に対する親愛みたいな物だったんだろう。
月の綺麗な秋の夜。
もうすぐ受験本番を迎えようという頃だった。
レセプト点検を終えて彼に送ってもらう時、思い切って告白した。
『あなたが、好きです。』
帰ってきたのは、あまりに冷たい言葉だった。
『君をそんな対象には見ていない。』
『それでも、私はあなたが好きです。』
『…迷惑だ。』