私、あなたの何なのでしょう? 10年目の再会は愛の罠
新宿にある三ツ藤の本社ビルでも広報は下の階、人事は上の階にある。
温厚な紳士で知られている滝沢部長直々の呼び出しなんて…珍しい。
その時の私は、何も疑うことなく人事へ足を運んでいた。
二課の仕事…おそらく求人票の広報チェックか何かくらいに簡単に考えていた。
「失礼いたします。」
ノックして、人事部に入った。
「やあ、瀬川君、待っていたよ。」
「お待たせして申し訳ございません。」
「じゃ、ちょっとこっちへ…。」
『えっ…。』
ただでさえ滝沢部長と直に話す事は珍しいのに、会議室へ来いと言う。
その時初めて、『もしかしたら…』と思った。