私、あなたの何なのでしょう? 10年目の再会は愛の罠
「いやあ~。瀬川君、知らなかったよ。」
会議室に入るなり、滝沢部長は例の情報を話し出した。
「はあ…。」
「君が鳴尾恒三氏のお孫さんだとは。」
「はあ…。」
「鳴尾大介氏とは、大学が同じでね。勿論、あちらが先輩だが…。」
「はあ…。」
「大介氏から、君を引き抜くにはどうしたらいいかって相談を受けてね。」
「はあ?」
「いやあ、うちとしても優秀な君を取られたく無いが…」
「私は、三ツ藤の社員です。他に移る気など全くございませんので
ご心配いただかなくても大丈夫です!」
つい、声が大きくなってしまった。
部長に対して失礼だったかな…。
慌てて笑顔を作って言葉を続けた。
「滝沢部長、お心遣いありがとうございます。
私は、ずっと三ツ藤で働かせて頂きたいと思っておりますので…。
今後ともよろしくお願いいたします。」
何とかその場を取り繕って、滝沢部長に断りを入れて穏やかに人事部を出た。
『やりにくいなあ…』
祖父か叔父が手を回したのか…。
鳴尾家との関係が社内に漏れたら厄介な事になりそうな気がした。