私、あなたの何なのでしょう? 10年目の再会は愛の罠
早速、翌日には中塚から連絡が入った。ホント仕事が早い男だ。
次の週末にメガバンク勤めの友人を紹介してくれるという。
私自身、まだ考えが固まっていないから具体的には決まらないかもしれない。
でも、専門家の意見を聞いてみたかったのだ。
江古田の古家を処分した金額では高円寺のマンション購入資金には足りないだろう。
現在の貯金を叩いてしまっては、将来何かあった時に心細い。
菜々美は古家を売った金額では足りない資金を、ローンで補おうと思っていた。
金曜の夜、菜々美は約束した会社近くの小料理屋へと足を運んだ。
同期で集まる時に良く利用している店で、とにかく料理が美味しい店だ。
暖簾をくぐると、テーブル席に座る男性二人が目に入った。
がっしりした体格の中塚の隣にいる、細身のメガネ男子が友人の銀行マンだろう。
「お待たせしました。」
「お、瀬川。お疲れさん。」
中塚の向かいに腰を下ろすと、直ぐに紹介された。
「この前話した、俺の同期の瀬川菜々美だ。」
「初めまして。中塚とは腐れ縁の、中高大と一緒だった延原学と申します。」
延原と名乗った青年は、丁寧な仕草で名刺を出してくれた。
「こちらこそ、および立てしてスミマセン。新宿支店にお勤めなんですね…。」
「はい、三ツ藤さんのビルとはお近くですね。」
「今日はよろしくお願いします。」