私、あなたの何なのでしょう? 10年目の再会は愛の罠
「上場企業にお勤めで、年収にも問題ありませんので
ローンの審査は通ると思われます。売却物件との差額分だけでしたら
毎月の返済額も家賃以下になるでしょう。」
「家がいくらで売れるか…でかなり変わってくるかしら。」
「それもありますが、高円寺は中古マンションでも売れるのが早いでしょう。
これぞ、という物件は早く抑えた方が…。」
三人でふむふむとiPadでの計算を見ながら話し込んでいると、頭上から声がした。
「君なら、キャッシュでポンと買えるんじゃないの?」
思わず声のする方を見上げると、鳴尾要がいた。
いつぞやのポーカーフェイスではなく、ニッコリと笑っている。
仕事帰りなのか、品の良いネクタイに上質なスーツを着こなしている。
「あ…。」
「誰?コイツ?」
遠慮なく、中塚が要を指さした。
何て説明すべきか…菜々美は言葉を必死で探した。
だが、要は飄々とスーツの胸ポケットから名刺を出して男二人に渡したのだ。
『それだけはやめて欲しい…。』
目の前の中塚と延原も、要の名刺に釘付けだ。
菜々美は彼の肩書を知らないが、きっと年齢以上の高位の物なのだろう。