私、あなたの何なのでしょう? 10年目の再会は愛の罠
「鳴尾要…あの半導体や電子部品を作ってる…鳴尾電子の御曹司?」
「この若さで、開発部次長?」
中塚と延原が呟いているのをぼんやりと菜々美は聞いていた。
従兄妹だなんて同期に言いたくない。どうやって誤魔化せばいいんだろう。
「瀬川とはどういうご関係でしょうか?」
中塚の口調がビジネスマンに戻ってる。
そりゃあそうだ。要は将来の社長だもの。ここで失点するわけにいかない。
「最近、知り合ったの。それだけよ。」
菜々美は『何も言うな』と気合を込めた視線で、要を睨んだ。
「そうなんですか?鳴尾さん。」
「ええ…。まあ…。」
アタッシュケースを持ち換えて、要はメガネをずり上げた。
「あ、お帰りですか?お見送りしますね鳴尾さん。」
その様子を見て、チャンスとばかりに菜々美は要を追い立てた。
「あ、瀬川!」
「お見送りしてくるから、待ってて!」
二人を席に残したまま、菜々美は要と一緒に店を出た。