私、あなたの何なのでしょう? 10年目の再会は愛の罠
菜々美は急いで小料理屋の中に戻った。
「中座してごめんなさい。」
「いえいえ、良かったんですか?御曹司は。」
「ええ。お帰りになりました。」
「すげえな、瀬川。あんな大物と知り合いか!」
「知り合いっていうか…。」
「ん?」
「知り合ったばかりだから。」
「そうか?」
「瀬川さん、話は戻りますが、取り敢えず物件の査定をさせて下さい。」
「はい。」
「それから、具体的に審査やローン返済計画を立てて行きましょう。」
「わかりました。」
「高円寺の物件についても、念のためご連絡ください。」
「延原さん、お世話になります。よろしくお願いします。」
「学、同期のよしみだ。瀬川の件、頼むな。」
「了解。出来る限りの事はするよ。」
二人の協力が得られて、菜々美はホッとした。
ローンを抱える事で、これからの仕事に張り合いが持てそうだし
お一人様の人生に対しての覚悟も出来る。
『鳴尾家に関わらず、誰にも迷惑をかけないでに生きて行こう。』
それが、今の菜々美の細やかな目標だった。