私、あなたの何なのでしょう? 10年目の再会は愛の罠
「何で…。」
高村の車に乗るのは、前回の軽井沢行きに続いて、これで二度目だ。
「何ですか?瀬川さん。」
「何で、あなたの車に二度も乗っているのかなあと思いまして。」
「この前もおっしゃってましたよね。」
「自分の運命が想像を超えてしまったので、困っているんです。」
「何も考えずに、流れに乗ってみたらいかがですか?」
「それもどうかと思います。」
「瀬川さん、意外に頑固ですね。」
「良く言われます。」
高村とポツポツ会話しているうちに鳴尾家の本宅に着いた。
田園調布にある広大な邸宅に、菜々美は息を飲んだ。
軽井沢の別荘を見た後だから、相当大きな屋敷だろうと思っていたが
まさか、敷地内に二件の家があるとは思っても見なかった。
母屋に祖父の恒三が住み、離れ…といってもかなり広そうな建物に
大介一家が住んでいると高村が解説してくれた。
今夜のパーティーは、母屋で開かれるらしい。
会社関係者を招いて、当主の恒三が元気になった様子を見せるのが目的だ。
「何だか、お気の毒ですねえ…。」
「それが、大会社を率いている人物の務めでしょう。」
「私にはわかりません。一般庶民ですから。」