私、あなたの何なのでしょう? 10年目の再会は愛の罠
パーティーは、かなり広い応接間と客用ダイニングを繋げて開かれていた。
招待客は到着順に恒三に挨拶をしている。
どちらかというと年配の客が多くて上品な雰囲気の会だ。
女性客は、10月になって袷の着物の時期になったせいか和服が主で、
大人っぽい落ち着いたワンピース姿もちらほら見える。
その中で、ロングドレスの貴子と瑠美は目立っていた。
瑠美はラメの入った生地のドレスなのか、照明が当たるとキラキラ光っている。
『内輪の会って聞いてたけど…』
菜々美は地味なライトグレーのスーツに、ブラウスだけシルクの物を合わせた。
大粒のパールのペンダントだけが唯一のアクセサリーだ。
案の定、ドレスコードが間違っていたのか貴子と瑠美からは冷たい視線を感じる。
二人を無視して、恒三の元に挨拶に行った。
「ご招待ありがとうございます。」
身内らしくない、ごく普通の挨拶をしてプレゼントを手渡した。
「よく来てくれたね。これは…?」
「私が作りましたので、お気に召すかどうか…。」
悩んだ結果、きっと高価な物は捨てるほどあるだろうと思い、
菜々美は久しぶりに編み物をしてみた。
準備期間が短かったから、簡単に編めるマフラーにでもひざ掛けにでもなるような物だ。
「ほう…。」
大振りの包装から手編みの品を取り出した恒三が目を輝かせた。