私、あなたの何なのでしょう? 10年目の再会は愛の罠


「先日はお世話になりました。」

菜々美がお辞儀をすると、女性は微笑んだ。

「とんでもございません。こちらこそお目にかかれて嬉しゅうございました。」

「あなたは…父をご存知なんですか?」

「はい、長く家政婦を勤めております、前田貞子(まえださだこ)と申します。
 私がこちらのお屋敷に勤め始めた頃、大学生でいらしゃいました。」

「そんなに前から…。」
「ですから、菜々美様にお目にかかれてホントに懐かしくて…。」

「私、父に似ています?」
「はい!とっても!」

二人で顔を見合わせて笑っていたら、廊下の奥から奏佑が出て来た。

慌てて菜々美は会釈して。玄関から出ようとした。

「菜々美…。」

後から、奏佑の声が聞こえる。

振り向くべきか、無視するべきか…。

「菜々美だろう?脇坂だ。覚えてる?」

そこまで言われたら、もう知らん振りは出来ない。
ゆっくりと、菜々美は振り向いた。営業スマイルを浮かべて。

「お久しぶりです、脇坂先生。」


< 43 / 131 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop