私、あなたの何なのでしょう? 10年目の再会は愛の罠
脇坂奏佑は恒三に呼ばれて鳴尾邸に来ていた。
恒三が是非来てくれと何度も連絡してくるから、仕方なく医師として訪れたのだ。
長時間は疲れるからパーティーには出て欲しく無かったが
どうしても顔を出すと言って本人が譲らない。
奏佑は経験から、社会的に地位が高い人間は病気になると厄介だと知っている。
それまで誰の指示も仰がずに会社を動かして働き続けているから
中々医者の言う事を聞かない。自分の判断で動いてしまう。
結局、悪化させてしまう事もあるのだが…。
鳴尾恒三もそのタイプだ。いつもマイペース。医者泣かせの患者だ。
『脇坂君、今度のパーティーには私の孫娘が来るんだよ。』
先週の診察の時に、恒三が珍しくプライベートの話を振ってきた。
『お孫さん…瑠美さんですか?』
『実は、もう一人いてね。名前は菜々美…。』
『菜々美…』
『不憫な子だ。長い事会えなかった、いや、会わなかったんだ。』
『会わなかった?』
恒三は、奏佑にどうしても孫娘の話がしたい様だった。
仕方なく、彼も話を聞く事にした。