私、あなたの何なのでしょう? 10年目の再会は愛の罠
先日恒三から話を聞いた時には、奏佑は半信半疑だったが
目の前の菜々美を見て、やっと10年前の菜々美と恒三の孫の話が重なった。
「…菜々美…良かったら送ろうか?」
「いえ、結構です。先生に送っていただくなんてご迷惑でしょう?」
菜々美が断ると、奏佑は黙ってしまった。
その時、応接室から瑠美が出て来た。
「脇坂先生、もうお帰りですの?」
またもや、手を取ろうかという程の距離まで駆け寄っている。
菜々美はそんな二人を見て、もう一度キッパリと言った。
「私は大丈夫ですので、先生はごゆっくり。お先に失礼いたします。」
ドアを開けて、外に出た。そろそろ木枯らしが冷たい季節だ。
今日の菜々美の心は、木枯らし程に冷えていた。
懐かしい人に会えた…だが、その人とは関わってはいけない。
私の事を『迷惑だ』と言い切った人だ。
二度と会う事は無いと思っていたが…
これは、再会ではない。遠い日の恋心との決別だ。