私、あなたの何なのでしょう? 10年目の再会は愛の罠
思い出になればいい
玄関から出て行く菜々美を呆然と奏佑は見送っていた。
「脇坂先生?あの人の事、ご存知でしたの?」
「ええ、先日…鳴尾さんからお聞きしました…。」
咄嗟に奏佑は誤魔化した。
瑠美には言わない方がいいだろう。10年前から菜々美を知っていたなんて。
「聞いちゃったの…。お祖父様から。」
「従姉妹だそうですね、貴女の。」
「嫌だわ。あんな人と従姉妹だなんて…。」
「えっ?」
「働いててお金に困ってるだろうに、遺産はいらないとか偉そうなの。
金額を吊り上げる気かしら。お金目当ての卑しい人よ。」
「そんな…。」
「それに、弁護士の高村に色目を使ってるの。もうすぐ30だから焦ってるのかしら。」
フフツと、瑠美は菜々美を軽蔑するように笑った。
『まさか菜々美が……?』
信じられない思いで、奏佑は瑠美の話を聞いていた。
遺産?金額を吊り上げる?
まさか、あの真面目だった菜々美が?
菜々美の生い立ちも初めて聞いたし、遺産問題も絡んでいる。
奏佑は複雑な気持ちで菜々美の後ろ姿を思い出していた。