私、あなたの何なのでしょう? 10年目の再会は愛の罠
だが、奏佑も人の事は言えない。
10年前、まだ10代だった菜々美を酷く傷つけてしまった記憶がある。
さっき菜々美が言った言葉が、奏佑の心に突き刺さっていた。
『先生に送っていただくなんて、ご迷惑でしょう?』
あれは、10年前の奏佑の言葉への当て擦りじゃあないか。
確かに、あの時は菜々美に『迷惑』だと言ってしまった。
「脇坂先生?どうなさったの?」
「ああ、失礼しました。今日はこれで帰ります。」
「まだ宜しいじゃありませんか。」
引き止める瑠美を無視して、奏佑も外に出た。
豪邸からは、静かな音楽と招待客らの会話のさざめきが漏れて来ていたが
奏佑はそんな世界に興味はない。
たまたま鳴尾恒三を担当したから、こんな会にも顔を出すきっかけが生まれただけで
普段は慌しく仕事に追われる毎日だ。
あの頃だってそうだった…。