私、あなたの何なのでしょう? 10年目の再会は愛の罠


化粧っ気は無いのにつるんとした肌。いつも微笑んでいるような口元。

少し癖のあるセミロングの髪。

背の高い自分と並んでも、丁度いい加減の身長差。
自分を見上げる角度が可愛い。

何より、勉強熱心だ。医療事務についても予備校の勉強にしても手を抜くことをしない。

母親の仕事を良く見ていたのだろう。いつも患者さんに優しく寄り添っていた。

仕事帰りに二人で喋ったり、食事に行ったり…。
ひと回り年下の女の子と何やってるんだと思いながら、つい誘ってしまう。


『ああ、俺は彼女に癒されてるんだ…。』


菜々美が自分の側で微笑んでくれるのが何より嬉しい。

その頃の俺は、医者としての進路に迷っていた時期だ。
『田原診療所』に来たのも、開業医としてやれるか試してみたかったからだ。

兄と一緒に父親の病院で働くのか、専門分野の勉強を続けるのか…。
その選択が出来なくて、『田原診療所』へ逃げていたのかも知れない。


秋口に、大学病院からボストン行きの枠があると知らされた。
行くべきだと思いながら、『田原診療所』の居心地の良さから離れがたくて…。

そんな時、菜々美から告白されたんだ。

『好きです。』

眩しいくらい、真っ直ぐな気持ちだった。

これまで結構モテたから、告白めいた事は何度も経験してきたが
菜々美の言葉は胸に響いた。



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