私、あなたの何なのでしょう? 10年目の再会は愛の罠


 『好きだ』と言われる事で、こんなに幸せな気分になれるとは知らなかった。
菜々美の言葉は、うだうだと人生に迷っている自分には眩しすぎた。

告白を受ける事は出来ない。

まだ幼い菜々美は、10歳年上の男に何を期待していたのだろう。

兄か、父親変わりか…。

俺の心の中には男としての醜い欲望だってある。
菜々美の清らかな身体を自分の手で汚してやりたいと思う程には。

それを理性で押し殺していたんだ。

『好きです』と言われたら、その欲がむくむくと顔を覗かせてくる。
このまま側にいたら、きっと理性がブチ切れる。


助手席に座る菜々美を押し倒す前に、大人として別れてやらなければ。


『君をそんな対象には見ていない。』


自分の口から出て来た言葉は、想像以上に冷たいものだった。


< 52 / 131 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop