私、あなたの何なのでしょう? 10年目の再会は愛の罠
菜々美は、少しだけ悲しそうな顔をして、
『それでも、私はあなたが好きです。』
真っ直ぐに俺を見つめながら、もう一度告げて来た。
やめてくれ、そんな綺麗な目で見ないでくれ…。
『迷惑だ。』
やっとその言葉で菜々美も納得したのだろう。顔色をなくして、去って行った。
引き止めたかった。だが、そうしたら自分でも何をするかわからない。
断った事を後悔したのは、それからすぐだった。
菜々美は診療所を辞めた。
『受験に専念する為』という理由は皆が納得するものだったが、
俺だけは居たたまれなかった。
『自分のせいだ』
菜々美が自分のせいで『田原診療所』を辞めたのに自分が残る訳にいかない。
そして、ボストンへ行く決心をしたのだ。
皮肉な事だ。
菜々美の純真な心を傷つけて、自分の人生を選ぶことが出来たのだから。