私、あなたの何なのでしょう? 10年目の再会は愛の罠
「…菜々美。会いたかった。」
信じられない言葉が聞こえて、コーヒーカップを持とうと俯いていた顔を上げた。
真っ直ぐに自分を見つめている奏佑と目が合った。
「私に?」
「10年前、酷い言葉で傷つけてしまった事を謝りたかったんだ。」
「もう昔の事ですし、気にしていませんから。」
患者の血縁だとわかったから、謝罪しようとしてるのかしら…。
目の前に奏佑がいる事実が信じられないまま、菜々美は思いを巡らせていた。
10年ぶりに会ったというのに、何から話せばいいのかお互いに手探りだ。
二人の関係は、一言では言うのは難しい。
数ヶ月、同じ職場にいただけ。
一緒にレセプトを見たり、勉強を教えて貰っただけ。
お喋りしたりご飯を食べたり楽しく過ごしただけ。
勇気を出して告白したら、こっぴどくフラれただけ。
面と向かって、奏佑から謝罪の言葉を受けても告白を断られた事実は消えない。
「今、何処に勤めてるの?」
「三ツ藤商事に…勤めております。脇坂先生は?」
「大学病院と、実家の手伝いだ。」
「ああ…。確かご実家は病院でしたね。」
「どちらの病院も鳴尾家と関係があって、それで恒三氏を担当する事になったんだ。」
「そうでしたか…。」