私、あなたの何なのでしょう? 10年目の再会は愛の罠
恋ならば許されるか
一人住まいのマンションに帰ると、力が抜け落ちるようだった。
薄暗い部屋の床に、今朝脱いだドレスがそのまま落ちていた。
もう似合わないサーモンピンクのドレス。
今日の自分は奏佑にはどんな風に見えただろう。
くたびれたオバサンだったろうか。
せっかく会えて、お茶までしたのに…。気の利いた言葉の一つも喋れなかった。
これが瑠美なら、煩いくらい彼に話しかけてあれこれ聞き出しただろう。
『でも、独身だって言ってた…。』
その言葉が、何より嬉しかった。
『嬉しい?』
今更の様に、自分の心が信じられないほど揺れていた。
『あんな振られ方したのに、まだ先生の事が…好きなのかな…。』
長い時間会っていなかったのに、
声も仕草も、あの頃のまま。記憶にある10年前の彼のままだった。
『好きだったんだ…。こんなにも…。』
あの人の事なら、細かいことまで全部を覚えていられるほど、好きだったんだ。
一度は終わらせたと思っていた恋心だけど、こんなにもあの人が…。
『好きなんだ。…今でも。』