私、あなたの何なのでしょう? 10年目の再会は愛の罠
仕事が終わると籠に活けられた季節のアレンジフラワーを買って菜々美は病院へ急いだ。
車が混んでいたので思ったより時間が掛かったが、19時過ぎには病院へ着いた。
受付で名乗ると、特別室を案内された。
その病室のある階へ行くには、一般とは別のエレベーターを使うらしい。
6階へ上がると、廊下の雰囲気も上質なものに変わった。
恐らくVIPが入院する為の部屋ばかりなのだろう。
聞いていた部屋番号のドアをノックした。
「どうぞ。」
女性の声だ。看護師だろうか。
「失礼します。」
菜々美が病室に入ると、恒三がベッドの背にゆったりともたれ掛かっていた。
その横に白衣の奏佑と看護師が立っている。点滴の準備をしている様だ。
「やあ、よく来てくれてたね。」
少し離れた窓際には高村弁護士も立っていた。
「お加減はいかがですか?」
菜々美の抱えていた花籠は、高村が受け取ってサイドテーブルに飾ってくれた。
もっと花で溢れているかと思ったが、部屋の中はガランとしている。