私、あなたの何なのでしょう? 10年目の再会は愛の罠
『どう返事しろって言うの…』
入院したと呼び出されて行ってみれば、高村弁護士と結婚しろと言う。
おまけに寿命をちらつかされたら、菜々美だって鬼にはなれない。
でも、結婚だけはお断りだ。しかも相手が高村とは…。
「困ったわ…。」
特別室専用のエレベーターで一階に降りながら、菜々美は途方に暮れていた。
こんな事、誰にも相談出来ない。
鳴尾家との関りは、同期の中塚にだって曖昧にしか伝えていないのだ。
「お一人様でいいのに…。」
その為に、マンションを購入するのだ。祖父に何と言えば納得してくれるだろう。
一階に着いてエレベーターの扉が開くと、そこに奏佑が立っていた。
もう白衣は着ていない。
「見舞いは終わったか?」
「え、ええ…。」
突然、ぶつかりそうな距離に奏佑が現れたので菜々美は面食らった。
さっきの病室での会話を何処まで彼は聞いていたのだろうか。
「じゃあ、帰ろう。」
いきなり腕を掴まれた。
表ではなく、通用口らしい所を抜けて職員の駐車場に連れてこられた。
「乗って。」
「でも…。」
「いいから、乗って。」
奏佑は苛立っている。怖いくらいだ。
言われるがまま、菜々美は助手席に座った。