私、あなたの何なのでしょう? 10年目の再会は愛の罠
また、彼の車に乗る日が来るとは…。
夜道を走りながら、菜々美はボンヤリとそんな事を考えていた。
車はすぐに、何処かの駐車場に止まった。病院から近い場所らしい。
エンジンを切ってブレーキを踏みこむと、いきなり奏佑は菜々美を抱き寄せた。
「あっ…」
息が出来ない。唇を奪われた。
奏佑はシートに菜々美を押し付けて、執拗なキスを続けた。
「………。」
何か言おうと思うのだけど、口を開くとキスが深まる。
息が苦しい。でも、キスは止まない。
『何で…?』
菜々美は混乱と官能の嵐の中にいた。
迷惑なはずの女と、奏佑は何でキスしているんだろう。
気がつけば車から降りて、エレベーターに乗っていた。
中は二人だけだったから、彼はずっと菜々美を抱きしめている。
ここはマンション?奏佑が住んでいるんだろうか?
ドアの前に、二人は無言で立った。流石に菜々美にでもわかる。
ここから一歩中に入るのが、何を意味しているのかくらいは。
きっと、もう戻れない。