私、あなたの何なのでしょう? 10年目の再会は愛の罠
瑠美は、祖父の入院先、『脇坂総合病院』を訪れた。
深呼吸をして、病院の建物を見上げる。目当ては祖父ではない。脇坂奏佑だ。
今日は彼が大学ではなく、この病院に勤務する日だと知ってやって来た。
午後の診察が始まるまでに、何とか彼を捕まえたい。
『鳴尾』の名前を出せば、たいていの男は上手く扱えるのだが
弁護士の高村誠治と、祖父の主治医の脇坂奏佑は思う様に動かせない。
瑠美は焦っていた。
女子大を卒業する頃には振るようにあった縁談も、27を過ぎたらピタリと止んだ。
花嫁修業と称して家でプラプラ遊んでいたのだが、世間の目は厳しくなる一方だ。
しかも、いきなり従姉妹だという女が現れた。
別に美しくもないのに、エスカレーター式の女子大卒の瑠美と違って、
有名大卒で大企業の広報部に勤めているというオンナ。
それだけなのに、パーティーでもチヤホヤされている。
働かなくちゃいけないのは、お金に不自由してるはず。
だけど弁護士や祖父に、祖母の遺産はいらないと偉そうに言ったらしい。
祖父へのプレゼントは、手編みだとかいう安っぽい物を持参する。
瑠美の価値観では考えられない事ばかりだった。
なのに、今まで瑠美に羨望の眼差しを寄せていた人達が彼女を称賛する。