私、あなたの何なのでしょう? 10年目の再会は愛の罠
瑠美は自分に都合のいい話しか聞かないし、都合のいいように解釈する。
『脇坂奏佑は自分の話を聞いてくれた。』
『菜々美の事は財産目当てだと思ってるはず。』
これですべて上手く行くと思うと、瑠美は顔が緩むのを感じた。
「瑠美さん。」
「はいっ。」
「悪い事は言いません。あなたはもう少し周りを良く見た方がいい。」
「え?」
「落ち着いて、ゆっくり周りを見て、相手と向き合って下さい。
それから良く考えて発言した方がいいですよ。」
「脇坂先生…。」
「今はわからなくても、この言葉を覚えておいて下さい。
もう、菜々美さんの事はあなたから聞きたくありません。」
ゆっくり奏佑は立ち上がり、冷たい目で瑠美を見た。
「失礼します。」
奏佑が喫茶室を出て行っても、暫く瑠美は動けなかった。
何を言われたのか、考えてもわからない。
ただ、彼から『自分』という存在が拒絶された事だけは理解出来た。