私、あなたの何なのでしょう? 10年目の再会は愛の罠
結果は陽性だった。
「どうして…。」
柄にもなく、泣きそうだ。
洗面所から悲壮な顔で出てくると、中塚は待っていてくれた。
ダイニングの椅子に座って、じっと菜々美を見ている。
「どうだった?」
「赤ちゃん…。お腹にいるみたい…。」
菜々美はそっとお腹に手を当ててみる。実感はわかない。
「そうか…。もしかして、あの医者の子?」
突然、中塚に言い当てられて菜々美は狼狽えた。
「どうして、そんな…。」
「何となく…だけど。」
「言わないでね!誰にも。」
「付き合ってんじゃないのか?」
菜々美は首を横に振るしか出来ない。
「たったひと晩過ごしただけ…。それから何の連絡もないし…遊びだったのかな。」
「まさか…。」
優しくて誠実そうな医者に見えたのに…。
「産むのか?あっ、悪い!いきなりこんな事聞いて。」
「産むよ。」
ポツリと菜々美が呟いた。
「状況は最悪だけど、シングルマザーだからって会社は首にならないでしょ。」
「だと思うけど…。」
「赤ちゃん、産みたいな…。」
その時、菜々美のスマホにメッセージが届いた。
「あ、延原さんだ…。」
スマホを開くと、高円寺近辺にある彼がお勧めの産婦人科一覧だった。
「やだ、延原さん。気がついてたの?」
「ほら、アイツは経験者だから…。」
「あ、そうだったわね。…気に掛けてもらって、嬉しい。」