私、あなたの何なのでしょう? 10年目の再会は愛の罠
早めにベッドに入ったが、気が張っているのか中々寝付けない。
様々な思いが込み上げてきて、何を考えても堂々巡りだ。
奏佑に知らせるべきだろうか…。
でも、あれから連絡を寄こさない人に何て言えばいいんだろう。
『子供が出来ました』なんて私に関心が無い人に知らせたって、
まるで結婚を迫るみたいじゃあないか。見苦しすぎる。
中塚の申し出には驚いたけど、付き合ってもいないのに結婚なんて…。
彼に何のメリットもないし、申し訳ない。
ふと、花嫁姿が見たいと言っていた痩せた祖父の顔が浮かんだ。
ダメだ。中塚に奏佑の子を育てさせるなんて、とんでもない話だ。
迷いは一瞬だった。中塚が何と言おうと、断らなければ。
菜々美はもう、奏佑に恋をした頃の18歳の子供ではない。
自分の力で働いて生きている、自立した女性だという意地もある。
『お腹が目立つまでに出来るだけ働いてから事情を話して、産休を貰おう。』
法律的には、労働者の権利だから産休は取れる筈。
未婚だからと苦情があれば、恋人とは別れたとか破談になったとか何とでも言える。
働きながら子育てをする為に、アラサーならではの開き直りだ。
まさか、雇止めみたいな事態にはならないと思うけど…。
そうならない為に、目の前の仕事をキチンとこなそう。
年末年始の多忙な時期だ。
多少、悪阻が心配だが、何とか乗り切って行こう。
そんな事を考えながらうつらうつらとしたら、直ぐに目覚ましが鳴る時間だった。