私、あなたの何なのでしょう? 10年目の再会は愛の罠
「ああ…高村との結婚話か。」
「…お断りいたします。」
「そう?残念だねえ…理由を聞いてもいいかな?」
あまり残念そうではない口ぶりだ。高村をあんなに勧めていたのに…。
「え…と、まだ結婚なんて考えられませんし…。」
「年が明けたら30だよ、そろそろ考えて欲しいものだね。」
「…丁度、友人からもそんな話があって…」
「おや?友人?そんな男性がいたんだ。」
「ええ、まあ…。結婚の申し込みは頂きましたけど…。」
断るつもりだと言うのは伏せておいた。
「高村の事は縁が無かったんだろう。お前からいい話を聞かせてくれるのを待ってるよ。」
「いえいえ、暫くは仕事が忙しいですし、結婚なんて…。」
「その気になったら、教えてくれ。」
「は、はい。スミマセン。」
祖父があっさりこの話を終えてくれて助かった。
「君が幸せになってくれる事が、私達の願いだからね。菜々美。」
「ありがとうございます。」
『私達』という祖父の言葉が気になったが、
高村との結婚話はひとまず無くなったので、菜々美はホッとした。