私を赤く染めるのは
朱莉side
❨朱莉Side❩
これはとある日曜日のこと。
久々に買い物に出掛けたら大雨に出くわした。
今はシャッターが閉まったお店の前で雨宿りをしているところ。
雨が降り出したのがもう少し早かったらお店で傘を買ったのに。
雷もゴロゴロうるさいし、本当もう最悪。
「ねーねー聞いてる?」
そして、さっきから隣で声をかけ続けてくるこの男。どうにかならないかな?
「向かいのカフェで雨宿りでもしようよ」
数分前、同じく雨宿りをしに来た20代位の男はさっきから延々と同じ話を繰り返している。
「大丈夫です」と一度断ったのにも関わらず、男の心は折れていないようだ。
一刻も早くここから立ち去りたいのだけれど、先にいた私がびしょ濡れになるのは何だか癪で隣の男を無視することに決めた。
本当についてない。
こんなところでナンパなんかしてこないでほしい。
そして、断られたんだからとっとと諦めなさいよ。
「えー無視とか悲しいんですけど」
それならさっさと帰ればいいのに。
そう思った時、隣にいた男は突然腕を掴んできた。
「いこーよ」
「ちょ、やめてください」
これは違うでしょ?
でも、こういう人間は何をしでかすかわからない。
はぁー、こうなったら雨に濡れて帰る方がマシか。
そう覚悟を決めたその時、「この子に何か用ですか」聞き慣れた声と共にグイッと体を引き寄せられた。