私を赤く染めるのは
ああ、その顔は。
「俺、念の為ゆづの家寄って来るわ。朱莉ちゃんこれ持っていっていいから。送ってあげられなくてごめん」
その言葉と同時に碧人くんから私の手にビニールが渡る。
そのまま背を向けた碧人くんは一度も振り向くことなく、雨が降る中走り出した。
「……朱莉ちゃんって」
呼び方元に戻ってるじゃん。
それだけ必死だってことか。
ていうか、先に電話したらいいのに。
いつも冷静な碧人くんが唯一心を乱される相手。
その理由がなんなのかなんて聞かなくてもわかる。
「てかこの傘、重いんだけど」
一人で使うには大きすぎるこの傘は荷物ごとすっぽりと私を隠した。