私を赤く染めるのは
「ちょ、何勝手に。生徒を家に入れるわけには……」
「碧人くんさっき私のこと朱莉ちゃんって呼んだよね?ってことは生徒の松村じゃなくて、友達の妹の友達。そういう認識でしょう。ならセーフ」
自分でもとんでもない理論だなと思いながらも、勢いのまま靴を脱ぎ家へと上がる。
「コンビニで色々買ってきたんだけど、どこに置けばいい?」
「……右手がリビング」
その勢いに負けたのか…それとも追い出す気力さえないのか、碧人くんは渋々リビングへと案内してくれた。
男一人暮らしとは思えないほどすみずみまで掃除が行き届いた廊下やリビング。
物もきちんと整理整頓されている。
けど、女っ気は微塵も感じない。
「薬は?」
「今から飲もうと思ったところ」
碧人くんはそう言うとカップうどんを手に取る。
「ちょ、風邪引いてるんでしょ。こういう時ってお粥とか食べるんじゃないの?」
「面倒じゃん」
「私がやるから」
「……朱莉ちゃんって料理できたっけ?」
その言葉に無言で買ってきたレトルトのお粥を見せつけると、碧人くんは静かに出来上がりを待った。
薬を飲み終えた碧人くんからは、もう帰りなさいというオーラをヒシヒシと感じる。
けれど、私はその視線に気づかないふりをして話を始めた。