私を赤く染めるのは


初めての告白は思ったよりも声が震えて、額や手にはじんわりと汗が滲んだ。

煌は考える素振りすら見せずに「ごめん。結月の気持ちには答えられない」と口にする。



予定になかった告白、そして失恋。

一度に色々なことを経験しすぎて感情が追いつかない。



ただ、煌からの「ごめん」という言葉だけがストンと胸へ落ちてきた。


「まぁ、こんなイケメンアイドルが近くにいたら好きになるわな」

さっきとは違い、冗談混じりに笑う煌。


この場の空気を明るくしようとしてくれたのだろう。

だけど、私はまだそんな気持ちにはなれない。

「違う。私はアイドルの煌を好きになったんじゃないよ」

一緒に生活する中で、煌の知らなかった顔をたくさん見た。

ファンサービスだなんて意地悪なことを言って私をからかう煌。

私が顔を真っ赤に染めると、いだずらが成功した子供みたいに笑う煌。

だけど、仕事には真剣に向き合っていて一切の妥協を許さない煌。

そして、時折優しい言葉をくれた煌。

あの雷の日、ずぶ濡れになって駆けつけてくれた煌。


私が今まで見ていたBijouの一色煌とは違う。



「いや、ここに来たのが他のメンバーでも好きになってたよ」


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