私を赤く染めるのは
『キミカラ』の直人があんなに好きだった沙友理への想いを断ち切って杏奈と恋に落ちたように、私も煌への想いを乗り越えられるのだろうか。
「……うん、一度よく自分の気持ちと向き合ってみる」
煌のことを考えるのは、もうやめにしよう。
いつまでも“無謀な恋”をしていても仕方ない。
前みたいに推しグループの一員として応援すればいいだけのことだ。
私はこの日、煌から貰ったパーカーを押入れの奥へとしまった。
碧人くんときちんと向き合うことを決めた私は、その日から碧人くんと頻繁に連絡を取るようになった。
休みの日はうちに遊びに来た碧人くんに手料理を振る舞って、話しをしたり勉強を見てもらったり。
たまに碧人くんの運転でドライブや買い物に出かけることもあった。
そして、時々Bijouが出演している番組を一緒に観たりもした。
朱莉同様、碧人くんの気持ちを知っていたというお兄ちゃんからの猛プッシュもあり、碧人くんと過ごす時間は確実に増えていった。
そうやって日々を積み重ねていると、煌を見ても穏やかな気持ちでいることができた。
きっと、こうして煌への気持ちは薄れていくんだ。
そして、碧人くんのことを好きになっていく。
それでいい、それがいい。
そんな風に思っていた私は気づかなかった。
この行為が自分の心にいくつもの鍵をかけているということに───。