私を赤く染めるのは


久しぶりに会う生の煌はいつもテレビで見ている煌と変わらないはずなのに、なぜか懐かしさを感じる。



「えっと……」

突然の再会に私は言葉を失った。

プライベートでは二度と会うはずがないと思っていた煌が今うちの玄関にいる。


「紫月さん今、プロデューサーの人から電話がきてて手が離せないんだ。だから俺が代わりに取りに来た」

ああ、なんだそう言うことか。

……なんだって何?これじゃあまるで何かを期待していたようだ。


「そうなんだ、これ」

お兄ちゃんの代わりに来たという煌に契約書が入ったファイルを手渡す。

たったそれだけのことなのに、手が震えた。


煌はそのファイルを受け取ると「ありがとう」と小さくつぶやいた。


これで用は済んだはずなのに、なぜか煌はこの場から立ち去ろうとはしない。

「あの……?」

他に何かお兄ちゃんから頼まれてたものあったっけ?


「ハチの熱愛違うから」

「え?」


煌の口から出てきたのは、もう一ヶ月近くも前に報じられたハチの熱愛の話。

どうしたんだろう急に?

あっ、煌は私がハチのファンだってことを知ってるから安心しろって意味なのかな?

「うん知ってるよ。事務所もコメント出してたよね」

「そっか、そうだよな」

「………………うん」

「……あのさ、」



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