私を赤く染めるのは


煌が使っていた部屋を綺麗に掃除し、事前に撮影していた桜の映像をプロジェクターを通じて壁へと映す。

お花屋さんで購入した本物の桜の枝を一番いい場所に飾り、廊下には桜の匂いがする香水を振りかけた。


「完璧」

これで“エア花見”の完成だ。

普通の付き合い方はできなくても、私達には私達なりの付き合い方がある。

仕事で忙しい煌が少しでも癒やされる時間になればいいな。




最後の準備であるレジャーシートを部屋に敷いてるとインターホンが鳴った。


「いらっしゃい」

「お邪魔します…ってなんか花?の匂いがする」

よしよし、香水の効果あり!

「煌が使ってた部屋のドアを開けてみて」

私がドアの前で立ち止まると言われたとおりドア開ける煌。


「……これって」

「じゃ〜ん!エア花見です」

「全部結月が準備したのか?」

「そう!お弁当も作ったんだよ」

「結月……お前って本当最高だな」

煌はそう言うと私の手をギュッと握る。

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