私を赤く染めるのは
煌がうちに来てから約2週間。
多忙な煌とはすれ違いの生活が続いていたが、何度か一緒に食事をしているうちに初日の緊張はどこかへ消えてしまった。
違和感がないといえば嘘になるが、煌との生活は思ったよりも順調に進んでいる。
「おい、何ぼーっとしてんだ」
「煌がいることにビックリして」
「まだ慣れねぇのかよ」
朝アイドルが起こしに来るなんてどう考えても異常。
これだけは何度、経験しても慣れる気がしないからやめてほしい。
そう言いたいのは山々だったが、どうせ何を言っても口達者な煌には勝てっこない。
それが2週間一緒に生活して分かったこと。
ベッドの端に座る煌は朝から完璧な身なりでキラキラとしたオーラを放つ。
それに比べてスッピン、寝起き、ボサボサ頭の自分が何だか急に恥ずかしくなり頭から布団を被った。
そんな私のことを、気にしていない様子の煌はそのまま話を続ける。
「これ、紫月さんから」
手渡されたのは、1枚の付箋。
そこには、お兄ちゃんの文字で
『ゆづと煌へ 10時になったら煌を迎えに行くからそれまでに煌の朝飯よろしく。煌はそれまでに準備しておくように 紫月』
と書かれていた。
「こういうことは前もって言ってよ」
「つーわけで飯」
「……わかったから、出て行って。もう、なんで勝手に入ってくるかなー」
「外から声かけても一向に起きてこないお前が悪いんだろ。お前が」
そう言うと煌は、中指で私のおでこをピンと弾いた。
「痛っ」