私を赤く染めるのは
「……いたんだなと思って」
「異端?」
「そうじゃなくて。結月から出る男の名前ってハチと紫月さん、それから俺だけだったから。他に仲良い男いたんだなーと思って」
「思って……?」
それがどうしたんだろう?
「何かお前が恋愛もせずハチハチ言ってんのがよーくわかった気がするわ」
煌は呆れた様子でもう一度、今度は深いため息をつく。
私の恋愛経験とハチに何の関係があるの?今、そんな話してないよね。
「……鈍感。気に食わなかっただけだよ」
「だから何が?はっきり言ってよ」
「お前の近くにいる男は俺だけだと思ってたからなんだか面白くねーなと思った。はい以上。この話はもう終わり」
目の前で終了と言わんばかりに手を叩かれる。
つまり、煌は私と碧人くんの関係が面白くなかったってこと?
なんだかそれって……。
鈍感と言われた私でも、さすがにそこまで言われたら気づいてしまった。
これは嫉妬。
だけど、漫画で読むようなキュンとするものじゃなくて煌にとっては所有物の一つを取られたような、そんな感情だろう。
煌が私みたいな相手に好意なんて抱くはずがないし。
「何それ」
そう口にした私には、笑顔が戻っていたに違いない。
「腹減った。早く飯にしよーぜ」
「はいはい。これ片付けたら準備するね」
この日、一人ご機嫌なお兄ちゃんをよそに私と煌は変な空気を残したまま、黙々と鍋をつついた。