私を赤く染めるのは


あ、やばっ。隣に煌がいるんだった。

「も、もしもし朱莉」

相手がお兄ちゃんや碧人くんではないことを伝えるために、いつもより大きな声量で電話に出る。


部屋に行くから入ってこないで。そうジェスチャーで伝えると煌が頷き、私は自分の部屋へと移動した。

『もしもーし、結月』


「き、聞こえてるよ。朱莉、今お祖父ちゃんの別荘だよね?もうこっちに帰ってきたの?」

『まだ別荘にいるよ。ギリギリまでいるつもりだったんだけど、パパの仕事の関係で明日には帰る予定。だから、学校が始まる前に結月と紫月くんにお土産渡したいんだけどいつ暇?』

「えっと、」

『紫月くんっていつ休みだっけ?』


「そのー」

それはつまり朱莉はうちに来るってことだよね?

いつもなら二つ返事でOKするところだけど、今の私は断る言葉を考えている。

朱莉をうちに呼ぶのはリスクが高すぎる。

煌本人がいなくても、勘の良い朱莉ならうちの変化に気づくかもしれない。

『もしかして都合悪い?』

「いや、そんなことないよ。あ、あのほら今お兄ちゃん仕事でいなくて。また夜にかけ直してもいいかな?」


『おっけー。じゃあ、また電話して』

「ごめんね、朱莉。じゃあまた夜電話するね」


……何とか誤魔化せた。


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