私を赤く染めるのは
高そうなブランドの服や小物、今ではもう手に入らないBijou1stコンサートのTシャツなどが並ぶ中、私はベッドの上に広げられていたパーカーを指差した。
「煌、私それがいい」
そのパーカーは煌が初めてうちに来た日に着ていたもので、その後もよく着用しているのを見かけた。
思い出と呼ぶには一番しっくりくるものだ。
「安もんだぞこれ」
他にもっといいものがあるだろと言いたげな煌。
「こういうのは値段じゃないの」
「まあ、結月がこれでいいならいいけど。ほら、大事にしろよ」
「ありがとう煌、大事にするね」
渡されたパーカーからは、かすかに煌の匂いがする。
目をつむれば、まるで煌がそこにいるかのような気分になる。これを選んで正解だった。
緩む頬を必死に引き戻して再び煌を見据える。
「で……目的は何?」
「は?」
「煌がただただ優しいなんておかしい」
「別に。今日のご馳走食べてたら俺も何か返さなきゃなと思っただけだ。ほら、選んだならさっさと寝ろよ。お子ちゃまはもう寝る時間だろ」
煌はそう言うと、しっしと虫でも追い払うかのように私を部屋から追い出した。
さっきまでの優しい煌は一体どこへ行ったのやら。
胃袋を掴めたのかどうかはわからないけれど、朱莉の助言はあながち間違っていなかったのかもしれない。
そんなことを思う夜だった。