私を赤く染めるのは
学校へ行くと校門の前で見慣れた後ろ姿が目に入り小走りで駆け寄る。
「橘先生、おはようございます」
「おはよー。あ、松村から聞いた。ハチに会えるんだってな」
朱莉にした報告は、どうやら碧人くんの耳にも届いていたようだ。
それなら話が早い。
「そうなの。しかも自引きだよ?ハチに会うためにおしゃれしなきゃ」
「普段の格好でも十分可愛いけど」
「もー碧人くんはそうやってすぐ甘やかす」
昔から碧人くんは私が何をやっても、どんな些細なことでも褒めてくれる。
煌とは大違いだ。
この前なんて新しく買ったパジャマを「ダサくね?」の一言で片付けられた。
まぁ、碧人くんの中で私は小学生のまま成長が止まっているのだろう。
「そういえば、今紫月ってあいつにつきっきりで忙しいんだろ?」
「うん。9月の中旬頃までは現場と事務所を行ったり来たりだって」
「もし何か困ったことがあったらすぐ連絡しろよ。どんな些細なことでもいいから」
「うん、ありがとう碧…じゃなかった。橘先生。でも大丈夫、何も起こらないって」
なんて呑気に笑っていた数日後、事件は私が一人の時に起きた。
そして、
私はその出来事により自分の気持ちを自覚することとなる──。