私を赤く染めるのは
確か昔も似たようなことがあったっけ。
私が小学校に入学する前、お兄ちゃんと留守番していると今日みたいな大雨が降った。
その直後、ピシャーンという音がして公園に雷が落ちたのだ。
普段、頼りないお兄ちゃんが震えながら必死に私の手を握ってくれていたことを今でも鮮明に覚えている。
ああ、ただ何度聞いてもこの音は慣れない。
頼みの綱であるお兄ちゃんは今日うちへは帰ってこない。
そんな時、碧人くんと学校でした会話を思い出した。
真っ暗な部屋の中、スマホから碧人くんの名前を探す。
そして発信のボタンを押そうとした時、充電して下さいという表示と共にスマホの電源が切れた。
「なんでこんな時に……」
慌てて隣に置いてあった充電器にスマホを繋げるが、充電中のランプは光らない。
「そっか、停電中だ」
大丈夫、落ち着け私。
部屋にはモバイルバッテリーがある。
それを取りに行って碧人くんに連絡すれば何の問題もない。
真っ暗闇の中、壁に手を当てながら部屋まで歩く。
雷の音がなるたびに足を止める。
それを何度か繰り返しながら、なんとか部屋まで到着してドアノブに触れた時、
ピッという音とほぼ同じタイミングで勢いよく玄関のドアが開いた。
「お、お兄ちゃん……?」
玄関の方を見てそう声を漏らすと、そこに立っていた人物は「大丈夫か?」そうつぶやく。