私を赤く染めるのは
その日の夜、19時55分。
20時からスタートする生放送の歌番組をテレビの前でじっと待つ。
お馴染みのBGMが流れMCの「こんばんはー」という挨拶と共に番組がスタートした。
「Bijouは2週連続出演だね」
司会の海田さんことウミさんがBijouに話を振る。
「はい、今日はメドレーを披露させていただきます」
慎くんの言葉に凌久が「楽しみにしててください」そう続ける。
オープニングトークで煌は一度も口を開かなかった。
やっぱりまだ調子が悪いんじゃ……。
昨日の煌を思い出すと、そんな不安が頭をよぎる。
その後、ハチが曲にちなんだトークをしていたが、その内容すら頭に残らないほど私は煌のことで頭がいっぱいだった。
「それではお聴き下さい。Bijouで振り向く君にとテレビ初披露曲、koi kamo2曲続けてどうぞ」
女性アナウンサーの台詞のあとに新曲のイントロが流れる。
この曲の出だしは煌のソロパートから。
祈るように手を組んでいた私は煌の歌声が聞こえるとそっとその手を緩めた。
「木漏れ日の中、君が〜♪」
低く落ち着いた声はいつもどおりメロディーを奏でる。
昨日の様子が嘘のように煌は安定した歌声とエネルギッシュなダンスを披露した。
「ありがとうございました」
そして、歌唱は終了。
Bijouは生放送を無事に終えることができた。