激甘御曹司は孤独な彼女を独占愛で満たす

「もう一度、人を好きになってみないか」

 驚くほど柔らかい声。私を包み込むような温かく優しい声に、観念するしかなかった。

「もう自分でも隠せないなって思ってました。まだハワイで出会って一か月経たないぐらいなのに」

 それなのに、あの日と何一つ変わらず、飾らず、傍にいて微笑んでくれる宇柳さんに、とっくの昔に惹かれていた。

「私も貴方が好きです」

 もう一度、信じてみたいと、夢みたいと思えるような相手。
 伝えた瞬間、恐怖も一緒に浮かんできたけれど、彼が強く抱きしめてその不安を追い払ってくれた。

「ご飯、冷めちゃいましたから温めましょうか」
「……ああ」

 にやにやと笑い彼が、煙草を手に持つとベランダに消えた。
 ご飯が温め終わったぐらいには吸い終わって隣に来るだろう。彼の行動パターンも色々と想像して、笑ってしまったのだった。

甘いバニラエッセンスばりの香料に包まれているみたい。お花の透き通るような自然の香りじゃなくて、甘ったるい焼き上げのお菓子の中に顔を突っ込んでしまったみたい。
心は宇柳さんを好きだと自覚してない。けれど身体が止まらなかった。

身体が気づいたら彼を見つけたら走り出してしまう。
< 110 / 168 >

この作品をシェア

pagetop